先日、コンサルティングしている会社の
管理職の方からこんなことを言われました。
「みんなでやりましょう!とか言って、
結局、私のところばかりに仕事が集中して、
私ばかり、損しているような気がします。」
おっしゃっていることは分かる気がします。
この管理職の方は、本当に優秀で、
やると決めたことは必ずやります。
仕事の段取りもよく、
限られた時間でも誰よりも仕事量をこなし、
早くからAIも取り入れて業務の効率化にも
取り組んでいました。
しかし、それだけに、
「今月中にやる」と言ったのに
やってこない部下や、
何度説明しても
やり方を忘れてしまったり
間違える部下を見ると
やる気がないようにしか見えない
のだと思います。
こんな管理職の方から
「私は損ばかりしている」と
言われると返す言葉もありません。
しかし、これはよくある話で
インテグラル理論という理論で
説明ができます。
インテグラル理論では、
人の発達を5段階で表します。
第1段階 呪術型段階(マジェンダ)
感情や直感で物事を捉え、
自分の経験を「法則」と信じる段階です。
第2段階 利己的段階(レッド)
自分の力を信じ、自分の欲求を満たすことを
最優先する段階です。
第3段階 順応型段階(アンバー)
組織の規範やルールに従い、
共同体の価値観を信じて行動する段階です。
第4段階 達成型段階(オレンジ)
データや論理に基づいて、物事を批判的に検証し、
成果を追求する段階です。
第4.5段階 多元型段階(グリーン)
多様な価値観を尊重し、
人それぞれの違いを認める段階です。
第5段階 進化型段階(ティール)
対立を生む構造そのものを客観視し、
全体の調和の中で新しい可能性を
創造する段階です。
今回、相談を受けた管理職の方は、
第4段階(オレンジ)から
第4.5段階(グリーン)の間で
悩んでいるのだと思います。
自分がある程度できることは
理解していて、
みんな、自分のようには
できないことも理解しています。
しかし、いざ、できない人を目の前にすると
許せない感情がわきあがってくる
のだと思います。
これは成長ゆえの悩みです。
第2段階(レッド)にいたら、
そもそも自分以外の仕事はしない
でしょうし、
第3段階(アンバー)にいたら、
組織のために言われたことに
なんの不満もなく
組織のために仕事をしている
と思います。
つまり、今のような
悩みを抱えるようになったのは、
発達段階が上がったからなのです。
それについて、
「入門 インテグラル理論」では、
次のように書かれています。
「入門 インテグラル理論」
発達は必ずしも幸福を保証しない。
人に気づかなくてもいいもの
見なくてもいいもの
考えなくてもいいものに意識を向けさせ、
周りの誰とも共有できない
苦悩を背負わせる可能性を秘めている。発達とは報酬を求めて「する」ものではなく、
やむにやまれず起きてしまうものなのです。
つまり、この管理職の方は、
まさに、この苦悩の中にいます。
ただ、それは、
このインテグラル理論を本人に説明したら、
納得してもらえるものでもないし、
本人が段階を上がろうと思って
上がれるものではないのです。
本人が、ある時、
それでも自分がやるしかないと思い、
本人の意識が変わり、
気が付いたら、
段階が上がっているものなのです。
そういう意味で、
今のままやり続けてもらうしかなく、
そのために上司ができることは
承認することしかありません。
承認し続けることで、
やり続けることができて、
やり続ける中で、さらに段階が上がり、
自分で悩みを解決することができる時が
来るのだと思います。
結局、人が成長するというのは、
良いことばかりでなく、
誰にも分かってもらえない苦悩を
抱えるものなのだということを
知っておくことは大切だと思います。
それともう一つ、
段階の話をすると、
上の段階がよくて、下の段階がダメ
という話になると思います。
しかし、その意識そのものが
第4段階 達成型段階(オレンジ)です。
自分は上の段階だと思って言っていたら
実は、下の段階だったなんてことは、
よくある話です。
このように人間の意識は、
固定されているものではなく、
自分の状態や環境によって
段階が目まぐるしく変わるものです。
だからこそ、常に内省をしながら、
自分の段階を確認するということが
必要なんだと思います。
この世界には終わりがないと思います。
今日も最後まで読んでいただき
ありがとうございます。
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